東北大学
タフ・サイバーフィジカルAI研究センター
シンポジウム2021

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講演内容

講演1岡谷 貴之 教授(AI研究部門)

深層学習による画像理解の可能性、
並びに推論の自己診断について

岡谷貴之 教授

われわれの研究グループでは、深層学習の画像認識・理解への応用に関する研究を行なっている。本発表では、今年度得られた2つの研究成果を紹介する。1つは画像理解のための深層ニューラルネットワーク(DNN)のアーキテクチャ設計と、その視覚対話問題(visual dialog)への応用である。パラメータ数の少ないコンパクトなDNNで、史上最高レベルの性能を達成可能なことを示した。もう1つはニューラルネットワークによる推論の自己診断方法に関する研究である。DNNの実世界応用では、推論結果の信頼性が重要である。推論の正しさを自己評価する方法に関するいくつかの研究をまとめて紹介する。

略歴:岡谷 貴之 Takayuki Okatani

専門は、コンピュータビジョン・知覚情報処理・知能ロボティクス。1994年東京大学工学部計数工学科卒業、1996年東京大学大学院工学系研究科計数工学修士課程修了、1999年同博士課程修了。博士(工学)。1999年東北大学大学院情報科学研究科助手、その後助教授を経て、2013年より教授。2016年10月理化学研究所革新知能統合研究センターチームリーダーを兼務。International Journal of Computer Vision誌Editorial Board Member、国際会議ICCV、ICPR、IJCAI、AAAI等のArea Chair等。

講演2大野 和則 准教授(フィジカル研究部門)

ロボット技術を利用した実世界の
情報収集と知の創成

大野 和則 准教授

少子高齢化にともなう労働人口の減少や大規模災害の発生を背景に、ロボット技術に対する社会的な期待は極めて高い。フィジカル研究部門ではロボット技術を利用して、物流や土木建設現場の自動化、インフラ点検や災害対応ロボットの自動化を行うことで社会課題の解決に取り組んでいる。本講演では、社会課題解決のために企業を巻き込んで研究開発を進めているこれらロボット技術の紹介を行う。また、ロボット技術は、実世界を動きまわり、対象に働き掛けることができる能動性を有している。能動的に集められた情報からは、人々やロボット自身の意思決定に利用する知識を作り出すことができる。フィジカル研究部門ではロボット技術を利用した実世界の情報収集と知識の創成を目標に、AI研究部門やサービス研究部門やHPC研究部門と連携して進めて行く今後の研究の方向性についても議論する。

略歴:大野 和則 Kazunori Ohno

2004年筑波大学大学院工学研究科知能機能工学専攻博士課程後期課程修了(工学)。同年神戸大学大学院自然科学研究科 COE研究員、2004年に東北大学工学研究科助手、その後、助教、講師を得て、2012年に東北大学未来科学技術共同研究センターの准教授に就任、2008年からさきがけ「知の創生と情報社会」研究員(兼務)、2015年から東京大学工学系研究科の客員研究員、2017年から理化学研究所革新知能統合研究センターの客員研究員を併任、現在に至る。レスキューロボット、3次元計測、ロボットの自律知能に関する研究に従事。RSJデータ工学ロボティクス研究専門委員会委員長。RSJ理事、IEEE、日本ロボット学会の正会員。

講演3越村 俊一 教授(HPC・計算モジュール研究部門)

リアルタイム災害科学の創成に向けて

越村 俊一 教授

発表者らは、リアルタイムで流通する災害情報や社会の動態に関する観測情報の分析と、災害による被害推計手法の高度化、発災直後の迅速な被害把握と災害救援活動の最適化に向けた技術的発展と深化を目指して、センシング、数値シミュレーション、ビッグデータ分析、空間情報科学を融合した、新しい「リアルタイム災害学」の創成に取り組んでいる。
本シンポジウムでは、津波災害、洪水災害をターゲットにしたリアルタイムシミュレーション、リモートセンシングによる広域被害把握研究の成果と展望について論ずる。

略歴:越村 俊一 Shunichi Koshimura

1995年に東北大学工学部土木工学科卒業、2000年に同大学院工学研究科博士後期課程を修了し、博士(工)を取得。同年4月、日本学術振興会特別研究員となり、東京大学地震研究所およびアメリカ海洋大気局に勤務して津波の研究に取り組んだ。その後、財団法人阪神淡路大震災記念協会「人と防災未来センター」専任研究員を経て、2005年5月に東北大学大学院工学研究科助教授、2007年に同准教授に配置換え、2012年4月に東北大学災害科学国際研究所教授(現職)に就任。2018年3月に、津波浸水予測の業務を実施する株式会社RTi-castを設立、ファウンダー・CTOとして活動中(兼任)。

講演4久田 真 教授(サービス研究部門)

インフラ・マネジメント研究センター
(IMC)の活動について

久田 真 教授

東北大学IMCでは、研究成果の社会実装を具現化するためのベンチャー起業や、リカレント(社会人の学び直し)による先端技術の理解を深めるための研修等を実施している。本講演では、2020年度における東北大学IMCの活動状況について情報提供する。

略歴:久田 真 Makoto Hisada

TCPAIサービス研究部門・部門長、工学研究科・副研究科長、東北大学IMC・センター長
1990年京都大学を卒業後、東京工業大学、新潟大学、(独)土木研究所を経て2009年より教授。2014年より同大・工学研究科に設置されたインフラ・マネジメント研究センターのセンター長。

講演5滝沢 寛之 教授

スパコン多様化時代の高性能計算プログラミング

滝沢 寛之 教授

ムーアの法則が終焉を迎えつつある現在、スーパーコンピュータのさらなる大規模化と複雑化は避けられません。将来のスーパーコンピュータが性能面で期待に応え、Society5.x時代を支えるインフラとしての役割を果たすためには、スーパーコンピュータを構成する多種多様な計算資源を適材適所で使いこなす必要があります。本講演では、異種複数の計算資源を搭載するスーパーコンピュータを想定し、そのアプリケーション開発の生産性と性能を両立するための取り組みを紹介します。

略歴:滝沢 寛之 Hiroyuki Takizawa

1999年東北大学大学院情報科学研究科情報基礎科学専攻博士課程後期3年の課程修了。博士(情報科学)。2017年より東北大学サイバーサイエンスセンター教授、2019年より同副センター長も兼任し、現在に至る。広く高性能計算に関連する技術に興味を持ち、特に高性能計算のためのプログラミングや実行時環境の高度化に取り組んでいる。情報処理学会、電子情報通信学会、IEEE、ACM各会員。

講演6吉川 将司 助教

深層学習とシンボリックな推論を
統合する基礎技術の開発

吉川将司 助教

人工知能分野において、深層学習の帰納的な処理と知識・言語による推論・プランニング等の演繹的な処理を融合させたより賢いAI技術の開発が重要視されている。しかしながら、深層学習の成功の大きな鍵は、誤差逆伝播法を用いたend-to-end学習であり、深層学習システムの構成要素は微分可能な関数でなければならず、離散的な記号処理を行う演繹的な仕組みとの相性が悪い。本発表では、そのような融合の実現のための発表者による取り組みについて紹介する。特に具体的な問題として、深層学習による自然言語処理では数量に関する推論が未解決問題である。この問題に対して、数量推論の仕組みを微分可能関数内部で表現(学習)するのではなく、深層学習モデル内部にシンボリックなプログラムを組み込む仕組みの開発について紹介する。

略歴:吉川 将司 Masashi Yoshikawa

2015年大阪大学外国語学部卒業。2020年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科において博士(工学)を習得。同年より、東北大学TCPAI研究センター助教。専門は自然言語処理、特に理論言語学と機械学習を組み合わせた推論システムの開発に従事。

講演7マス・エリック 准教授

新型感染症対策を取り入れた
長期的な避難所運営の
マルチエージェントシミュレーション

マス・エリック 准教授

本研究の目的は、リモートセンシングにより浸水域の予測・把握をし、COVID-19の感染拡大を低減して避難者を保護するために、強化学習を用いて最適な避難所レイアウトを提案することである。避難所レイアウトは空間的に静的な問題だけではない。避難所内の人が様々な活動を行うので、複数箇所で相互作用を発生する可能性があり、感染リスクが高まる。これを避けるために最も適切な避難所の政策を強化学習シミュレーションの結果を議論する。

略歴:マス・エリック Erick Arturo Mas Samanez

ペルーのリマで生まれ、国立工科大学を卒業。ペルーの地方自治体で、防災担当者の経験を持つ。
東北大学で博士修了し、災害科学国際研究所に勤務。東北大学タフサイバーフィジカルAI研究センターも兼任。
研究対象エリアは、エージェントベースモデリング、津波数値シミュレーション、避難シミュレーション、ドローンの活用、リモートセンシングにも関連している。

講演8多田隈 建二郎 准教授

タフ実体としてのロボット機構の考案と具現化
- 柔軟グリッパ機構から磁気鍵トリガ機構までの変遷 -

多田隈 建二郎 准教授

実環境において機能するロボットには、頑健性・適応性の高さが求められる。この観点に基づき、研究開発を続けてきた柔軟なグリッパ機構と、情報含有体としての鍵に着目した磁気鍵トリガという非接触スイッチング機構に至るまでの変遷について説明する。

略歴:多田隈 建二郎 Kenjiro Tadakuma

2007年3月 東京工業大学大学院 理工学研究科 機械宇宙システム専攻 博士課程 修了。
2007年4月 Massachusetts Institute of Technology、Department of Mechanical Engineering、Postdoctoral Associate.
2008年1月 東北大学 大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻 産学官連携研究員。
2008年4月 電気通信大学 知能機械工学科 助教。
2009年8月 大阪大学大学院 工学研究科機械工学専攻 助教。
2015年5月 東北大学 大学院情報科学研究科 応用情報科学専攻 准教授。
2019年8月 東北大学タフ・サイバーフィジカルAI研究センター 准教授 (現在に至る)。

講演9鈴木 高宏 教授

青葉山及び福島RTFにおける
モビリティ・イノベーション拠点形成

鈴木 高宏 教授

福島浜通りでは、福島イノベーション・コースト構想により震災復興に向けてロボット等の先端研究の集積が進められている一方、原発避難からの帰還を進めているこの地域では公共交通の再構築が大きな課題となっている。そのため、全国的にも困難な状況にある地域交通を先進技術・知見をフル活用して将来に向けて持続発展可能なものとしていくべく、東北大学が中心となり、かつ全国の学のネットワークと連携した学際的研究教育拠点の形成に着手している。自動運転など次世代モビリティにおいては、同地域で重点分野とされるロボット・エネルギー等の分野との連携が重要であり、関連した取組の一部を紹介する。

略歴:鈴木 高宏 Takahiro Suzuki

東北大学未来科学技術共同研究センター 教授、博士(工学)。1998年東京大学工学系研究科博士課程修了・学位取得、同大生産技術研究所講師、2000年助教授、2004年同大情報学環助教授、2007年同准教授。2010年長崎県へ出向、長崎EV&ITSプロジェクトを推進。2013年東大に復帰、2014年から現職。この他、長崎総合科学大学客員教授、東京大学情報学環客員教授、(一社)電気自動車普及協会(APEV)理事、(公社)計測自動制御学会理事など。
専門はロボティクス、非線形制御、ITSのほか、科学技術コミュニケーション、産学連携・地域連携、先端技術社会実装、プロジェクトマネジメントなど学際的に活動。 日本機械学会、日本ロボット学会、計測自動制御学会、自動車技術会、IEEE、ITS Japan、研究・イノベーション学会など会員。准教授 (現在に至る)。