東北大学
タフ・サイバーフィジカルAI研究センター
シンポジウム2024

講演内容

講演1坂口 慶祐 准教授 

大規模言語モデルの解釈可能性と
透明性への取り組み

坂口 慶祐 教授

大規模言語モデルは、その高度な能力により、様々な応用分野で革新をもたらしている。しかし、この急速な展開は新たな問題点も浮かび上がらせており、倫理的な懸念、バイアス、プライバシー問題、そしてモデルの解釈可能性といった課題に直面している。これらの問題に対する現在の理解と、それらを克服するための技術的な挑戦について紹介する。

略歴:坂口 慶祐 Keisuke Sakaguchi

2005年早稲田大学第一文学部哲学専修卒業。2006年英国University of Essex心理神経言語学修士課程修了。理化学研究所脳科学総合研究センター等を経て、2013年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科修士課程修了、2018年米国Johns Hopkins UniversityにてPh.D. (Computer Science) を修了。米国Allen Institute for Artificial Intelligence(AI2)リサーチサイエンティストを経て、2022年より現職。

講演2滝沢 賢一 特任准教授(客員) 

ロボットなどの移動体を対象とした
無線通信技術

滝沢 賢一 特任准教授(客員)

遠隔制御されるロボットにおいては、無線通信は重要な技術のひとつになります。ロボットの利用場所や用途は拡大の一途をたどっています。この期待の実現には、無線通信の高度化もまた必要になり、例えば、複雑な構造を持つ建物内でも通信途絶リスクを把握できる技術や、通信だけでなくロボット位置推定のようなセンシング機能を提供する技術が求められます。本講演では、ロボットなどの移動体を対象とした無線通信技術について、これまでに行った実験結果(AI/MLを利用した電波強度予測やロボット位置推定)や国際的な技術動向(5G/6G)についてご紹介します。

略歴:滝沢 賢一 Kenichi Takizawa

2003年4月から国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)に勤務。以来、様々な無線通信技術(ウルトラワイドバンド、ドローン用無線、海中無線等)に関する研究開発及び国際標準化活動に従事。2021年4月より、NICTレジリエントICT研究センターサステナブルICTシステム研究室長。2022年より、タフ・サイバーフィジカルAI研究センター特任准教授(客員)。博士(工学)。

講演3羽生 貴弘 教授 

不揮発ロジックに基づく
エッジAIハードウェアの挑戦

羽生 貴弘 教授 

AI技術はさまざまな社会課題を解決できるポテンシャルを有しているものの、その応用展開には、エネルギー消費の増大が課題となっています。本講演では、エネルギー 供給の制約された環境(エッジ端末など)への応用展開を図る技術として、不揮発ロジックを取り上げ、その実現例を紹介します。

略歴:羽生 貴弘 Takahiro Hanyu

1989年3月 東北大学大学院工学研究科博士後期課程修了(工学博士)。同年4月 同大学工学部助手。1993年2月 同大学工学部 助教授。同年4月 同大学大学院情報科学研究科 助教授。2001年4月 内閣府総合科学技術会議 参事官補佐(重点分野担当)(~2023年3月;併任)。2002年4月 同大学 電気通信研究所 教授。現在に至る。2022年4月 同大学 電気通信研究所 所長(2025年3月)。IEEE、IEICE、JAP、IPSJ会員。

講演4鏡 慎吾 教授 

低遅延映像ディスプレイシステムと
拡張現実感への応用

鏡 慎吾 准教授

現実の情景に付加的な情報を重畳して視覚提示する拡張現実感システムにおいては、映像ディスプレイには厳しい低遅延性が要求され、そのため高フレームレートの確保が重要視されている。一方、ディスプレイの方式によってはフレームレートそのものを上げることなく実効的な遅延を短く取ることが可能であり、うまく活用するとシステム全体の低コスト化につながる。本講演ではそのようなシステムの実現例を紹介するとともに、拡張現実感を含むインタラクション応用等の取り組みについて報告する。

略歴:鏡 慎吾 Shingo Kagami

1998年東京大学工学部計数工学科卒業。2003年同大学院工学系研究科博士課程修了。博士(工学)。科学技術振興事業団研究員,東京大学助手,東北大学講師、准教授を経て、2024年4月より東北大学未踏スケールデータアナリティクスセンター教授。高速画像処理を中心とするリアルタイムデータ処理と低遅延情報提示技術およびその応用に関する研究に従事。

講演5石黒 章夫 教授 

モルフォフリー制御:多足類から探る
多脚歩行に通底する運動制御原理

石黒 章夫 教授

動物に比肩しうるようなしなやかかつタフな動きをロボットに発現させるためには、「限られた計算資源で、全身に遍在する膨大な運動自由度を即時適応的に操る運動機能を生み出す制御原理とは何か?」という問いに対して真っ向から取り組み、その本質を徹底的に紐解く必要がある。動物の動物たる所以の発露であるさまざまなロコモーション様式には、動物が進化過程という壮大な試行錯誤の場を通して獲得した人智を超えるような制御原理が伏在しているはずである。その本質を炙り出すために、われわれはムカデなどの多足類に着目した研究を進めている。多足類は節足動物の中でも進化的に早い時期に出現した動物種であり、例えばムカデは恐竜が闊歩していた時代以前から、ほぼ四億年以上もの長きに渡ってその姿かたちを変えずに生き残ってきた。このため、多足類には昆虫を含めた節足動物が示す優れた運動能力の原型がシンプルなかたちで内在していると考えられ、特に脚式ロボットの制御法の構築に資する、得難いモデル生物となることが期待される。 最近の研究を通して、多足類が示す多様なロコモーション様式の背後には、脚数などの形態に非依存な普遍性の高い制御原理の存在が見えてきた。本講演では、われわれの試みをわかりやすく紹介したい。

略歴:石黒 章夫 Akio Ishiguro

1991年名古屋大学大学院工学研究科博士後期課程修了(工学博士)。名古屋大学助手、助教授を経て、2006年東北大学大学院工学研究科教授、2011年東北大学電気通信研究所教授、現在に至る。ロボティクス・数理科学・生物学を融合した方法論に基づいて、動物が示すしなやかかつタフな動きを生み出すカラクリを紐解く研究を進めている。最近では、古生物学者と協働して絶滅動物の動きの復元にも取り組んでいる。

講演6阿部 一樹 特任助教(大阪大学大学院 基礎工学研究科) 

螺旋式能動メカナム車輪:
水陸混在領域での全方向推進技術

阿部 一樹

自然を相手にするロボットの移動メカニズムとして、水陸が混合した領域や、雪原・泥濘などの軟弱地盤にも対応可能な全方向移動メカニズム、螺旋式能動メカナム車輪を紹介する。踏破性向上を実現するスクリュー形状や能動大口径サブローラといった基礎技術をはじめ、本車輪を総合した全方向移動体や、副次的に得られる滑らかなステアリング走行能力などについても取り上げる。

略歴:阿部 一樹 Kazuki Abe

2021年山形大学大学院理工学研究科機械システム工学専攻博士後期課程修了。2021年東北大学タフ・サイバーフィジカルAI研究センター特任助教(研究)。メカトロニクス、組み込みシステム、ロボット機構などの研究に従事。技術士補(機械)、博士(工学)。

講演7Ranulfo Bezerra 特任助教 

Multi-Robot Task Allocation and
Path Finding in Industry 6.0

Ranulfo Bezerra

This study explores a garment manufacturing system that integrates reinforcement learning with a multi-agent setup of autonomous and stationary robots alongside human workers to enable dynamic, on-demand clothing production. By leveraging reinforcement learning for real-time optimization of task allocation and scheduling, the framework adapts to personalized manufacturing demands, enhancing efficiency and showcasing the potential of human-machine collaboration in Industry 6.0.

略歴:Ranulfo Bezerra 特任助教

Ranulfo Bezerra received his Ph.D. degree at Tohoku University, Japan in 2021. He received his M.Sc. and B.Sc. in computer science from the Federal University of Piaui, Brazil in 2018, and 2016 respectively. He is currently a special appointed assistant professor at the Tough Cyberphysical AI Research Center (TCPAI) at Tohoku University. His research interests are intelligent robotic systems, robotic perception and autonomous robotic systems and their related applications. A member of RSJ and IEEE.